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Posted on 2014-04-14
屋上インタビュー完全版 vol.25 / 小松 亮太〈バンドネオン奏者〉

テテーテテレーテー♪テテテーテーテー♪
今回は心地よい鼻歌(風の詩~THE 世界遺産)をイントロにインタビューをはじめたいと思います!って『いきなりなんですか?』と思いましたよね。実は今回、なんとテテーテテレーテー♪でダバダー♪でデデデッデデーな世界的バンドネオン奏者で作曲家の小松亮太さんへのインタビューなのです。しかも小松さん、屋上で演奏されたことがあるんですよ!そりゃ、色々と聞きたくもなるでしょ?ということで、インタビュースタート!!!

Interview&Text ● 水野 桂助
Photos ● 奥野 浩次

いきなりですが、バンドネオンってどんな楽器なんですか?アコーディオンとは根本的に違うようですが。

小松さん:確かにアコーディオンと間違われるんですが、全く別の楽器です。音色も全然違います。よく『音の違いが分からない』といわれますが(笑)。バンドネオンはドイツのアコーディオンを開発した会社が新たな楽器として開発したものなんですよ。アコーディオンと演奏方法が全く違うため、なかなか定着しなかったみたいですけど。ただ、タンゴの曲に音色が合うということで、アルゼンチンには多く輸出されていたようです。

ドイツではなくアルゼンチンで重宝されていたんですね。

小松さん:僕も取材で訪ねたことがあるんですけど、それまで経営危機に陥っていたその会社はバンドネオンがアルゼンチンで重宝されたことにより、なんとか立て直せたみたいです。ただ、その会社も第2次世界大戦に巻き込まれてしまい、バンドネオンの設計図もろともなくなってしまったようで…。だから、ずっとバンドネオンを作ることができない状態だったんですよ。幸いにも質の良いバンドネオンはアルゼンチンに輸出された後だったので、なんとかなったのですが。本当に最近ですよ、新しいバンドネオンが作られるようになったのは。たぶん2000年ぐらいかな。正直、まだ道半ばかなという気がしますが。

やっぱり音とか違うんですか?

小松さん:うーん、音云々の前に壊れやすい。僕みたいに激しく演奏するとすぐにね…。まぁ本当にいい楽器は、丈夫でちゃんと修理すれば、ずっと使えますから。

なるほど!今日持ってきていただいたバンドネオンは1930年代のものとお聞きしました。見た目もきれいで美術品みたいですね。

小松さん:まだ、ワシントン条約もなかった時代ですからね。象牙もふんだんに使われています(笑)。

こちらの楽器を昔からずっと使われているんですか?

小松さん:ここ10年は、ほぼこれで演奏しています。実は借り物なんですけど。このバンドネオンも、貸してくださっている方がアルゼンチンで購入したものなんですよね。その方はすごく良い買い物したと思います(笑)。

そうだったんですね。演奏といえば、屋上で演奏されたことがあるそうですが。

小松さん:しましたね。たしかブリュッセルの屋上で。さっき話したバンドネオンの会社に取材に行ったときだと思います。

演奏されてみてどうでしたか?

小松さん:怖かったです(笑)。柵がない屋上だったので。

ほかに何か感想は…。

小松さん:うーん、確か、いきなり屋上に連れてこられて『ここで演奏してください』っていわれたんですよね。風がすごくて落ちるんじゃないかと思いながら演奏しました。本当に怖かったですね。そういえば、あの演奏ちゃんとオンエアーされてたのかなぁ。

では、屋上で演奏された感想は『怖かった』と(笑)。

小松さん:はい、怖かった!そういえば、アルゼンチンでも屋上で演奏したことあります。

本当ですか!?その時はどうでした?

小松さん:柵がなくて、怖かった!

(笑)。

小松さん:日本だとそういう場所での撮影は慎重になるんですけど、向こうの人って『まぁ、大丈夫だろ』みたいな感じでやらせますからね。

そんな気はします。ノリで大丈夫だろみたいな。でも、屋上で撮影したがるのは、景色が良いからですかね。

小松さん:それはあると思いますよ。空もきれいですしね。

では、ちょっとあらためてお話をまとめさせていただきます。屋上での演奏の感想は…。

小松さん:柵がなくて怖かった(笑)。

了解です(笑)。そういえばもうすぐ『live image』の時期ですよね?

小松さん:そうですね。今まさに練習中です。4月末から始まりますね。

今年で何回目になるんですか?

小松さん:2001年からなので14回目ですね。もうずっと出させていただいてます。

もう、ライフワークですね。小松さんにとって『live image』はどんなイベントですか?

小松さん:このイベントがなかったら『今の自分はいない』と言えるぐらい僕にとっては大切なものですね。僕自身が作曲活動を始めるきっかけにもなってくれました。色々なジャンルのミュージシャンと知り合いになれたのもそう。このイベントのおかげで色々なジャンルの音楽とバンドネオンで共演することもできるようになりました。そして、なによりタンゴをあまり知らない方の前でタンゴを演奏する機会に巡り会えたのは大きかったですね。

イベント以前は作曲活動はされてなかったんですね。

小松さん:はい。ぶっちゃけ周りに置いていかれたくなかったんです(笑)。イベントを一緒にやる周りのミュージシャンは、ほぼ作曲できましたし、それがすごく悔しかった。だから僕も必死で勉強しました。幸いにも作った曲を皆さんがみてくれて『ここはこうした方がいい』とか『ここはこうじゃない』とか色々と教えていただけました。

では『live image』がなければ世界遺産のテーマ曲も生まれていなかったと。

小松さん:そういうことになりますね。昨日ちょうど奥さんと『live imageがなかったら僕はどうなっていたんだろう』って話してましたし。実はこのイベントが始まる数年前までは本当にタンゴ不遇の時代で…。タンゴって聞くだけで『あぁ、昔流行ったやつね』みたいな。自分でライブをやろうと色々なワールドミュージック系のライブハウスに連絡をいれてもすぐ『タンゴ?結構です』ってほとんど断られてしまって。本当にタンゴと聞くだけですぐ断わられ続けたあの状況はトラウマですね。

今と状況が全然違いますね。

小松さん:そうですね。あの状況はもう二度と味わいたくないです。それに世界的に考えてみるとバンドネオン奏者ってタンゴの枠からなかなか出ることができない状況にあるんです。奏者自身も『バンドネオンはタンゴを演奏するものだ』って考える人が多くて。でも、日本では色々なフィールドで、今は活動することができる。それこそ番組のテーマ曲だったり、映画やアニメの曲に使われていたり。実は日本ほど日常にバンドネオンの音色が溢れている国はほかにないんですよね。こういう状況は本当にありがたいですね。

そうなんですね。ちょっと意外です。そもそも『live image』に出演することになったきっかけはなんだったんですか?

小松さん:『live image』は『image』というCDが発売されたのがきっかけで生まれたイベントなんですよ。僕はそのCDの中で葉加瀬太郎さんと『情熱大陸』を一緒に演奏させていただいたんです。この共演が参加のきっかけですね。あの時は、確かいきなり当時の僕の担当の方に『葉加瀬さんがOKっていってくれているから、情熱大陸を一緒に演奏してこい』って言われて。翌日にはレコーディングをしていました(笑)。そこから始まって、今ではおかげさまで14回目です。

では『live image』の魅力ってどんなところですか?

小松さん:やはり、色々なジャンルの音楽を楽しめるということですね。あとは出演者も色々なジャンルの方がたくさん出演するので、イベント自体は3時間30分ほどなんですが、飽きずに楽しめるとお客さまも言ってくれます。やってる方は大変ですけどね。とくに後ろのオーケストラの方々は(笑)。

確かに(笑)。

小松さん:特に僕の場合、タンゴをやるのでクラシックやジャズのオーケストラの方々は大変だと思います。いつも練習中『こうじゃない、そうじゃない』って言ってますから。

色々なジャンルにあわせないといけないですもんね。ちなみ今回の『live image14』の見所ってどんなところですか?

小松さん:あまり詳しくはいえませんが、今回は『コラボレーション』がテーマになると思います。出演者がリレー形式で出てくる感じです。まず、Aさんが演奏して、その後にBさんを招きいれてAさんとBさんがコラボする。その後Aさん下がって、今度はBさんが個人で演奏する。そして次にCさんを招きいれてコラボするみたいなイメージですね。

へぇー、見ている人も次に誰が出てくるのか楽しみになりますね。ちなみに小松さんは誰とコラボするんですか?

小松さん:それは言っちゃダメでしょう(笑)。ネタバレになっちゃいますから。

ですよね(笑)。でも、すごく楽しいイベントになりそうですね。期待しています。今日は色々とありがとうございました!

小松さん:こちらこそ。

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って、終わらないのは『屋上とそら』です。もう率直に聞いていいですか?

小松さん:大丈夫ですよ(笑)。

では、屋上ってよく行きますか(笑)?

小松さん:うーん、どうだろう。でも、家を建てるときに屋上を作ろうしましたよ。ただ、区役所に却下されてしまいましたけど。なにか高さの問題だったみたいです。嫁さんはまだ、あきらめてないようですけど。どうも、屋上でバーベキューをしたいみたいです。

分かります。僕もそうなんですよ。小松さんご自身はどうですか?

小松さん:あったら、やってしまうでしょうね(笑)。でも、屋上ってあると良いですよね。あれば、もう1フロアー自宅が増えるわけですから。なんとか作りたいですね。

そうなんですよね。できることを祈ってます。では、屋上と聞いて思い出すことはありますか?

小松さん:ありますよ。景品でもらったトランシーバーをマンションの屋上にもっていって、色々な無線を傍受して遊んだ思い出です。なぜか、そのトランシーバーが無駄に性能が良くて、意図せずに勝手に無線が傍受できたんですよ。おじさんが女性のことを話している会話とか、怪しい男の人たちの怪しい会議とか色々と聞こえてきたね。家で家族と『この人たちはいったい何を話しているんだ』って、聞き耳をたてて聞いていましたし(笑)。

と、盗聴ですね(笑)。

小松さん:違法傍受です。いや、勝手に聞こえてきたんですよ(笑)。それで、屋上に行くと電波が良いから色々と聞こえるらしいということで、友達と屋上に行っていました。ある時、タクシー会社の無線が聞こえてきたんです。それまでの経験上、相手の声は聞こえても、こちらの声は何をしゃべっても聞こえないということが分かっていたんです。なので、調子に乗ってタクシー会社の『○○番、どちらにいますか?』の問いかけに『ただいま、北千住です』って答えたりして遊んでいたんです。そしたら、いきなり『北千住?』って応答されて(笑)。ヤバいと思って素直に状況を話したら、タクシー会社の人にメチャクチャ怒られました。

それは怒られるでしょうね(笑)。でも、思いもよらない屋上活用術が聞けて良かったです。では、最後にこれだけは聞かせてください。ご自身が作曲された曲の中で、屋上で聴くならどの曲を聴きますか?

小松さん:やっぱり『風の詩 ~ THE 世界遺産』でしょう!

ですよね。聞いておいてなんですが、そうだろうと思ってました(笑)。今度こそ、今日は本当に色々と楽しいお話をありがとうございました!

小松さん:こちらこそ(笑)。

と、どうしようもない質問にも気さくに答えていただいた小松さん。終始楽しいインタビューとなりました(と思っています)。そんな小松さんですが『live image14』の後にも、ちょっと気になるLiveが7月に控えています。その内容は2013年6月にピアソラの元奥様を招いて行われたライブレコーディング・ピアソラの最高傑作との呼び声も高い超大作『ブエノスアイレスのマリア』に再び挑戦するというもの。もちろん今回も14人編成で!小松さん曰く『ブエノスアイレスのマリア』すべて演奏するライブは数あれど、当時と同じ14人編成で行うLiveはまずないそうです。興味をそそられますよね。ちょっと気になったそこのアナタ!是非足を運んでみてはいかがでしょうか?

Liveの詳細はコチラから→ www.ryotakomatsu.com/
「live image14」は4月26日開始。詳細はコチラ→ www.liveimage.jp/

小松 亮太(バンドネオン) KOMATSU Ryota/Bandoneon
東京生まれ。98年、ソニーより衝撃的なCDデビューを果たす。共演は、ピアソラと共に活動したタンゴ界のトップアーティストたち。タンゴを若い世代にブレイクさせる引き金となった。以後、自身のユニットをひきいて多数の公演をこなしながら、自らのプロデュースによる意欲的な企画公演も行っている。
CDはこれまでに20枚リリース。大貫妙子、小曽根真、ミッシェル・ルグラン、NHK交響楽団など、ジャンルを越えて様々なアーティストと共演している。ソニーのコンピレーション・アルバム「image」、同ライブツアー「live image」にも、初回から参加。
03年にはブエノスアイレスでライブを行い、アルゼンチン演奏家組合などから表彰された。また、05年には南米4カ国ツアーを行い、各地でソールド・アウトが続くなど、海外での活動も積極的に行う。
08年には、ピアソラの幻のオラトリオ「若き民衆」の日本初演コンサートを企画し、東京オペラシティコンサートホールにて満員の観衆の中で公演を成功させた。09年には、初の書き下ろし本「小松亮太とタンゴへ行こう」(旬報社)を出版、日本経済新聞誌上にて絶賛された。2010年よりTBS「THE 世界遺産」のオープニングテーマ曲を作曲、演奏している。また、映画「グスコーブドリの伝記」(ワーナーブラザース配給・手塚プロダクション制作)、映画「体脂肪計タニタの社員食堂」(角川映画配給)、NHKドラマ「ご縁ハンター」の音楽も手掛けている。

小松亮太オフィシャルサイト→ www.ryotakomatsu.com/
小松亮太オフィシャルブログ→ ryotakomatsu.eplus2.jp/
小松亮太Twitter→ @Komatsu_Ryota
小松亮太公式フェイスブックページ→ www.facebook.com/komatsuryota

水野 桂助 keisuke mizuno ライター・プレス
1978年愛知県生まれ。relaxみたいな雰囲気のフリーペーパーを創りたい!とそそのかされ、渋谷直角さんのようなインタビュアーが必要だ!と焚き付けられ、巻頭インタビューは雑誌の華だ!とプレッシャーをかけられ、毎号巻頭インタビューを担当する遊びと子育ての両立に悩む1児の父。事務所先輩はじまりの様々なご縁を経て、屋上とそらfreeに最重要ポジションで参加中。帰りたがらない編集長とアートディレクターに挟まれる辛い日々を「みんなで楽しく!」をモットーに乗り切り中。
> twitter @mizu227

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