インタビュー / CONTENTS
Posted on 2013-04-11
藤野可織〈小説家〉/ 屋上インタビュー完全版 vol.19
みなさん『プファイフェンベルガー』って俳優知ってますよね?
あの記憶に残るようで、あまり残らない映画によく出てる肉体派俳優。な
んで急に『プファイフェンベルガー』について聞くのとおもったそこのアナタ。
実は今回はその『プファイフェンベルガー』が屋上で大活躍しそうでしない(笑)というか、
そこにいない小説『プファイフェンベルガー』を発表した藤野可織さんへのインタビューなのです。
だって『プファイフェンベルガー』が登場する屋上小説なんて、
興味が湧かない訳がないじゃないですか?
ってことで、インタビュースタート!
Interview&Text ● 水野 桂助
Photos ● 堀江 浩彰
ー 小説の舞台にするくらいなので、屋上好きなんですよね?
藤野さん:いえ、そうでもないです…。
ー えっ…。では、なぜ屋上を舞台に?
藤野さん:実は、この小説を書くちょっと前に、お友達に『屋上とそらfree』を見してもらったんですよ。
ー ほう!? ちなみに、見た感想は?
藤野さん:拝見したときの印象は『なんや、狭いジャンルのフリーペーパーだけど、そこが面白いな』っと。
ー ありがとうございます(笑)。
藤野さん:で、見てたら、そういえば屋上ってあまり行かないなって。それで、ちょっと行ってみようって思って行ったのが、結果的にこの小説を書くきっかけになったかもしれないです。
ー 本当ですか!? じゃ『屋上とそらfree』がなかったら、この小説は生まれていなかったってことでいいですね!
藤野さん:そういうことになりますかね(笑)。
ー すごい!うれしいです。で、実際に行った屋上はどうでしたか?
藤野さん:その時は、京都タカシマヤの屋上に行ったんですが、子どもの頃に行った屋上とはまったく違う屋上になってまして。
ー どう違っていたんですか?
藤野さん:都会の廃墟になってました(笑)。子どもの頃に行ったときは、遊園地みたいだったのに。100円入れると動く動物の乗り物があったりして。それに乗った記憶もあたんですが…。でも、大人になっていったら、何もなくて、本当に廃墟みたいでした。
ー なんか、寂しいですよね。そういうの。
藤野さん:いえ、むしろ逆です。私、廃墟好きなので。なんか、周りには色々な建物があって、町の喧騒を感じるのにその屋上は本当に何もない。あっ、ベンチと神社はありましたね。もう、すごく居心地が良かったです(笑)。行った日は暗くなるまで、そこでボーッと考え事をしてました。
ー そういう人もいるんですね(笑)。でも、暗くなる前、何考えてたんですか?
藤野さん:京都タカシマヤの屋上って、建物自体にはエレベーターがたくさんあるのに、屋上に繋がっているエレベーターって、ひとつしかないんですよ。しかも、出入口もひとつだと思うんです。きっと、従業員専用の出入口はあるんでしょうけど。で、ふとあの出入口がなくなって、この屋上から出られなくなったらどうしよう…。って、色々と妄想してたら暗くなってました(笑)。
ー なんですか、その怖い妄想…。それに、そんな感じの屋上に閉じ込められる話、僕知ってます(笑)。
藤野さん:もしかして『プファイフェンベルガー』ですか(笑)?
ー 確か、そんなタイトルだった気がします。でも、あの小説すごく読みやすかったですし、面白かったです。ただ、読み終わった後のモヤモヤ感がすごくありましたけど(笑)。
藤野さん:ありがとうございます(笑)。
ー 物語的には中盤までは、どういった方法でこの屋上から出るんだろう?ってワクワクしながら読んでいたのに、後半から急に展開が怪しくなってきますよね。
藤野さん:そうですか?
ー 十分すぎるほど怪しいじゃないですか!主人公?の佐藤がバレエ教室を目にしたあたりから。で、その教室で老婆が踊りだしてからは、なんかすごく不安な気持ちになりましたよ。そして、あの終わり方ですもん…。
藤野さん:きっと、読んでいただいた方によっていろんな感じ方があると思います。そうやって、小説を読んでくれた人が、読後にいろいろな感じ方をしてくれるとうれしいです。ちなみに、その老婆の踊るバレエ教室のネタは、そこのダンス教室を見て思いついたんですよ。
ー やっぱり!そうなんじゃないかなって、ここに来たときから思ってたんですよ!
(インタビュ―は京都の大丸の屋上です。ネタ元の教室は大丸の屋上に行けばすぐ見つけれますよ!)
藤野さん:気付きました? 実は京都タカシマヤの屋上がすごく居心地が良かったので、その後もちょくちょく、いろんな屋上に行ってみたんです。で、ここの屋上に来た時にたまたま見つけて、小説のネタにしたんですよ。でも、大丸の屋上は京都タカシマヤの屋上と違って、すごく整備されてますよね。
ー 芝生もキレイで気持ちいいですね。ちなみにタカシマヤと大丸、どっちの屋上が好きですか?
藤野さん:タカシマヤ(即答)。
ー やっぱり(笑)。では、ちょっと小説に話を戻しますが、先程いろいろな感じ方をしてくれればいいとおっしゃってましたが、藤野さん本人としては、この小説を通して言いたかったことって、明確にあるんですか?
藤野さん:いやぁ、どうでしょう…。こういった事をあらためて聞かれると、なんか恥ずかしいですね。もうその辺りは本当に好きなように感じていただければいいです(笑)。
ー すみません、野暮なことを聞いてしまいました。では、話題を変えて。『プファイフェンベルガー』って何者ですか?ウィキには載ってなかったんですけど(笑)。
藤野さん:お気づきだと思いますが、私が勝手に考えた架空の俳優さんです。名前は、響き重視で考えました。いい響きじゃないですか?『プファイフェンベルガー』って。
ー クセなる響きですよね。つい、声に出して言ってみたくなります。ちなみに『プファイフェンベルガー』のモデルっているんですか?
藤野さん:敢えて言うなら、シュワルツェネッガーですね。あとはちょっとスタローンとか。
ー 僕はセガールかと思ってました。スタローン好きなんですか?
藤野さん:そうですね。ランボーとか大好きです。3の邦題の「怒りのアフガン」とか大好きですね。邦題が。知ってます?ランボーってグリーンベレーの(…略…)なんですよ!ロッキーは(…略…)ですけど。
と、この質問を機に、藤野さんに延々とスタローンやほかの肉体派俳優の講義をしていただきました。それはもう、小説に登場する佐藤が『プファイフェンベルガー』について妄想する以上の愛で。ただ、あまりにも内容が膨大なのと屋上と関係がないため割愛させていただきます(笑)。すみません、藤野さん!!!では、インタビューに戻ります。
ー 分かりました。十分すぎる程、伝わりました! 藤野さんの『スタローン愛』。ただ、あまりにインタビューが屋上とかけ離れてしまったので、最後に屋上に関する質問で締めさせてください。時間も時間ですし(笑)。ズバリ、藤野さんにとって屋上ってどんな場所ですか?
藤野さん:ゾンビが大量発生した際に立てこもる最後の場所ですね。
ー うーーーん、まぁ、いいか(笑)。ということで、今日は本当にありがとうございました。
藤野さん:こちらこそ、ありがとうございました。
とまぁ、そんなこんなですごく楽しいインタビューでした。『屋上』と『プファイフェンベルガー』の魅力を伝えられているかは別として…。ちなみに気になる屋上小説『プファイフェンベルガー』は『en-taxi』(扶桑社)の37号で読めますよ!興味の湧いた方は是非とも。そして、最新作の「爪と目」は『新潮』(新潮社)の4月号で読めます。こちらも重ねて是非!そして最後に、屋上って小説の舞台にもなっちゃうくらいステキな場所なんですよ!みなさんもフラッと屋上に行ってみてはどうですか? そこで何が起こっても保証はできませんけど…。
藤野可織
小説家。2006年「いやしい鳥」で文學界新人賞。2009年「いけにえ」で芥川賞候補。単行本は『いやしい鳥』(文藝春秋)、『パトロネ』(集英社)。
WEB:近眼地獄→ http://d.hatena.ne.jp/myopie/
水野 桂助 keisuke mizuno ライター・プレス
1978年愛知県生まれ。relaxみたいな雰囲気のフリーペーパーを創りたい!とそそのかされ、渋谷直角さんのようなインタビュアーが必要だ!と焚き付けられ、巻頭インタビューは雑誌の華だ!とプレッシャーをかけられ、毎号巻頭インタビューを担当する遊びと子育ての両立に悩む1児の父。事務所先輩はじまりの様々なご縁を経て、屋上とそらfreeに最重要ポジションで参加中。帰りたがらない編集長とアートディレクターに挟まれる辛い日々を「みんなで楽しく!」をモットーに乗り切り中。
> twitter @mizu227
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